2024年1月23日開催の「Prime Video Presents Live Boxing 6」のメインイベントとして用意された、寺地拳四朗 vs. カルロス・カニサレス。
私を含めほとんどの方が考えていた”寺地の圧勝”という予想を覆す大熱戦、大混戦となりました。
目の離せない名勝負
カニサレス選手がスタミナ・攻撃力・テクニック・インサイドワーク・経験といった自分の持てる全てを駆使して、寺地というフライ級最強との呼び声も高いチャンピオンに向かっていく姿に感動しましたし、迎え撃つ寺地チャンピオンも追い込まれながらもその地力や引き出しの多さを披露しました。
試合は判定決着となりその判定は2-0(113-113、114-112×2)で寺地健四朗チャンピオンの勝ち。薄氷を踏むような防衛勝利となりました。
こういう瞬間に立ち会えると長年ボクシングや格闘技を見続けてよかったなと感じますし、これからも期待を込めてボクシングや格闘技の観戦をするのだろうなと思います。
まるで映画のようなカニサレス選手の猛攻撃は、体力的にも長く続くはずがないと思っていましたが、信じられないことに最後まで猛烈でした。
カニサレスがインターバル(ラウンドとラウンドの間にある1分間の休憩時間)で疲れ果てたような様子を見せていのは、もしやブラフだったのか!?
ラウンドもインターバルも、目を離せる隙がない素晴らしい激闘でした。
各ラウンドのポイントと判定
ただ、この名試合の価値を貶める気はないのですが、少し気になる点がありました。
3名のジャッジが11Rと12Rをどのようにジャッジしたのかです。
攻撃的なスタイルをこの試合で維持していた寺地選手は、セコンドの指示もあり、最後の2Rはバックアップとジャブを使って距離をとってディフェンシブに戦うことを選択しました。
その作戦自体は悪くないと思いましたし、むしろその作戦に切り替えるのが遅すぎたぐらいにも感じました。
その選択が正しかったのか、ジャッジ3名のうち2名は、11R・12Rを10-9と寺地選手にポイントを振り分けていました。もう1名のジャッジは、11Rを寺地選手に12Rをカニサレス選手に振り分けていました。
11Rにカニサレス選手に10点を付けたジャッジは最終的に113-113のドローとし、残りの2名のジャッジは114-112で寺地選手を支持しました。
ジャッジ | 1〜10R | 11R | 12R | 試合判定 |
1人目 | 94−94 | 寺10−カニ9 | 寺10−カニ9 | 寺地勝ち 114−112 |
2人目 | 94−94 | 寺10−カニ9 | 寺10−カニ9 | 寺地勝ち 114−112 |
3人目 | 94−94 | 寺10−カニ9 | 寺9−カニ10 | ドロー 113−113 |
2名のジャッジが11R・12Rのどちらかをカニサレス支持としたら全員ドローで引き分け。
もしも、全員が11・12の両ラウンドをカニサレスを支持していたら3-0でカニサレスが勝利、新王者誕生ということになっていました。
結果的には11Rからの作戦変更が功を奏した形になりましたが、その内容はどのようなものだったでしょうか?
寺地選手は11Rからは上記のように距離をとってジャブを当ててペースを握ろうとし、実際にそれができている時間が長くありました。
しかし時折、カニサレス選手のパンチを被弾してバランスを崩す場面もあるように見えました。
なかなか判断の難しいところです。
ボクシングの採点基準
そもそもボクシングの採点はどのような基準で判断されているのでしょうか?
以下は一般財団法人日本ボクシングコミッションルールからの抜粋です。
第122条(採点基準)
試合の採点は、次の各号の項目を基準としておこなわれる。
① クリーン(エフェクティブ)ヒット正しいナックルパートによる的確かつ有効な加撃。有効であるか ないかは、主として相手に与えた効果にもとづいて判定される。
② アグレッシブ攻撃的であること。ただし、加撃を伴わない単なる乱暴な突進は 攻撃とは認められない。
③ ディフェンス巧みに相手の攻撃を無効ならしめるような防御。ただし、攻撃と 結びつかない単なる防御のための防御は採点されない。
④ リングゼネラルシップ戦術的に相手に優り、巧みな試合運びによって自らのペースにもっていくこと。
一般財団法人日本ボクシングコミッションルールより
そして、上記の基準で採点の際は、クリーンヒット > アグレッシブ>ディフェンス > リング・ジェネラルシップという順番で重要視するということになっているということです。
ただ、ここが最大の問題点だと思うのですが、その採点基準の優先順位をはっきり明言している記述が見当たらないのです。これでは、ジャッジの好みや主観で判定に差異が出てしまうことを許してしまいます。
これは敢えて明言を避けているように勘繰られても仕方ないようにも感じます。
個人的な印象としては、露骨に距離を取ってジャブでポイントを稼ぐ寺地選手よりも、前に出て時折強い攻撃をクリーンヒットさせていたカニサレス選手が優勢に試合を進めているように感じました。
皆さんはどのように感じられたでしょうか?
採点と観戦
選手たちの一挙手一投足に身を乗り出して熱く観戦するのもいいですが、少し冷静に手元に紙とペンを用意して採点をしながらボクシング観戦をするのも楽しいものです。
私も素人ながら各ラウンドごとに採点をしてみると、また試合に対する印象が変わったと感じることもよくありました。
採点をしながらのボクシング観戦、いかがでしょう?
色々な意見を聞いてみたいですし、またいつかキックボクシングやMMAとの採点基準の比較などもできたらいいなと思います。