道場は、格闘技の練習をする場だけでなく、人々の生きる道が交錯する場所でもあってほしいと願っています。
そんな空我道場に集う愉快な仲間たちの、豊かな個性やエピソード、格闘技を練習に感じている魅力などを深掘りしたく、私ミカミがインタビューさせていただきます。
Iさん
空我歴:2023年5月入会
きっかけ:お父さんと弟さんがボクシングをやっていたことからキックボクシングに興味を持ち、現在は週に2回くらい練習中
キックボクシングを始めてから、以前から続けているピラティスの動きも良くなったと褒められるように!
戦績:他の人が試合に出るかは気になるけれど、自分の試合の予定は今のところなさそうです笑
今回は、K-POPや映画を通して馴染みはあるものの、詳しくは知らなかった韓国のあれこれについて、空我道場でキックボクシングを練習されている韓国出身のIさんにお話を伺いました!
現金を持ち歩かないといけないことにびっくり
ミカミ
Iさんは韓国から日本に来られて、どれくらいになりますか?
Iさん
今年の4月で10年になります。でも大学の時にも交換留学で千葉県にある大学に通っていました。
ミカミ
この10年で変わったなと思うことってありますか?
Iさん
まずはキャッシュレスが進んだことです。10年前から韓国ではバスに乗る時もクレジットカードを使っていたので、最初に日本に来た頃は、現金を持ち歩かないといけないことにびっくりしました。今はずいぶんキャッシュレス化したなと思います。
でも、現金だけの店もまだあるし、ICカード機能付きのクレジットカードを作ったけれど、後払い機能は大阪でしか使えなくて、東京で使うときはチャージしないといけないというような不便はまだありますね。
ミカミ
ぼくも最近やっとICカードを使うようになったのですが、使い始めると今まで何てめんどくさいことをやっていたんだろうって思いますね。
Iさん
交換留学で日本に来ていたとき、12年くらい前には消費税が5%だったけれど、それが8%になった。百均で買い物すると108円になって小銭が綺麗にならなくて、5%の時代を知っているので、なんかこう中途半端な感じに10年間の変化を感じます。
ミカミ
確かに、前は5%でしたね。なんかわからなくなってしまうけど笑
日本ではレンタルDVDが生き残っているとか、CDがいまだに売れるとか、他の国に比べて、アナログなものが残っていると聞きます。新しい時代になかなか対応できない国と感じますがどうでしょう?
Iさん
それは、良いところもあると思います。例えば全部Amazonになってしまうと、そういう消費に馴染まない年配の人もいるでしょうし、アナログなところと両立できているのがすごいと思います。韓国では10年前でもレンタルDVDはほとんど衰退していたので、日本に来たときにはまだあるのって感じでした。
ミカミ
TSUTAYAのレンタルDVDとかね。ここ5年くらいで、TSUTAYAのレンタルDVDがどんどん潰れて、本屋に変わってきましたね。
あの「だいじょうぶ?」の一言
ミカミ
日本に興味を持って住もうと決めた理由、きっかけはありますか?
Iさん
なぜ日本に来ると決めたんですか?って聞かれたときは必ず話すことがあるんですよ。
12年くらい前に交換留学で千葉の大学に通っていた頃、日本に来て6ヶ月くらい経ったときに東日本大震災がありました。ちょうど、あの日のあの時間は、コンビニでバイトをしていたんです。
あの震災の前からずっと地震が多くて、そこに大きな震災がきたんですけど、目の前に物が落ちてきたり、店長のタバコまもれーって声でタバコの棚を支えたりしてたんです。
その直後に、お客さんがすごくたくさん来て、缶詰とかおにぎりとかお弁当を買って行くんですけど、私はずっとコンビニの中だから、何が起こったのかもわからなくて、お客さん多いなって思ってました。
ちょっとおさまった時にコンビニから出て外を見てたら、今も覚えているんですけど、すごい年配の、白髪で腰も曲がったおばあさんが「だいじょうぶ?」って声をかけてくれたんです。
私の名札を見て、だいじょうぶ?外国人だろう?って、だいじょうぶって怖かったよねって声をかけてくれたときに、なんだかすごくショックを受けました。私は外国人とはいえ若いのに、若い私をおばあさんが心配してくれてる、この優しさはなんだろうって。
その時のことは今もまだ映像にように頭に残ってて、あの「だいじょうぶ?」の一言がね。
あとは地震が起きて帰れなくなった人たちがルールを守って帰れるところまで歩いて帰るとか、避難所までちゃんと列を作って並んでいるとかを見たのもきっかけです。
人の本性は大変なときに出ると私は信じているんですけど、どれだけ優しかったらこの人たちはこの大変なときに私のことを心配してくれるんだろうか、ってことに衝撃を受けました。
日本に来るのを決めた理由を聞かれときは、いつもこの話をします。
ミカミ
むちゃくちゃいい話ですね。こんなにいい話を聞けるとは思ってませんでした。ぼく自身は、日本には色々問題があるなと感じていて、日本すごい的な話はあまり好きではないんですが、今のお話は、日本の良いところが出た瞬間だなって素直に思います。
Iさん
その後、親も心配するし韓国に一度帰国したんですが、あのおばあちゃんのことを思い出して、残りの留学を続けようと思ってまた日本に戻ることに決めたんです。
震災で外国の人たちが自分の国に帰ってしまったときに私が戻ったことが励ましになったようで、大学の先生たちから、戻ってくる決断をしてくれてありがとうって言われました。大学も液状化とかで結構被害を受けていて大変なのに、そんな中でも戻ってきてくれてありがとうって。
「ありがとう」って言葉になるのかって思って、この不思議な国の不思議な国民のことを理解するにはどうしたらいいのかって考えて、じゃあ言葉の勉強をしようと、大学卒業後に言葉の研究をするために日本に来て、それがきっかけですね。
ミカミ
もうここで終わってもいいくらいのお話ですね。ぜひ皆に伝えたいエピソードです。Iさんのイメージを損なわないような日本でいないといけない、と思いますね。
一番はサッカー、次に野球
ミカミ
さっきのお話がすごすぎて、今さら何を聞こうかという感じですが、一番お聞きしようと思っていたことが2つありまして、一つ目は韓国では、格闘技はどういうポジションなんだろうということです。スポーツ全般ではサッカーと野球がメジャーと以前お聞きしたことがありますが、どうでしょう?
Iさん
一番はサッカー、次に野球があって、バレーボールとかの球技がつづく感じですね。やっぱり一番はサッカー。
ミカミ
日本のメジャースポーツと似ている感じですね。例えば、柔道ってどういうポジションですか?
Iさん
(今はキックボクシングをやっているけれど)韓国にいたときはあまりスポーツにそこまで興味がなかったから個人的な感想になりますが、柔道は世界選手権なんかで韓国人選手がメダル獲得したりするとおめでとうってなるけれど、サッカーとか野球みたいにシーズンがあって試合も多くてトーナメントもあってと1年中熱気が続く感じではない。
ミカミ
サッカーや野球は定期的にニュースになるので印象に残りやすいですよね。お客さんも1年で何度も観戦するだろうし、露出が多いというのは大きいですよね。格闘技では年間100試合とかできないですしね。
Iさん
もしすごく大きな試合に出て優勝したら注目されるかもしれないですけど。昔のフィギュアスケートみたいに、空から落てきた天才のような選手が出てきていろんな大会で活躍したりすれば、注目されるかもしれない。
Part2は、韓国の徴兵制度や、実際に徴兵制度があることの影響などについてのお話です。